パクパクと口を開ける俺はまるで金魚のようだ。
俺、今なら水の中でエラ呼吸できーーーー


…………………ない。


正直者ですみませえええん!!


動揺してんですよ!!!!!
実はすんげえ動揺しまくりなんですよおおおおお!!!!!




「……あたしは別に、男同士でもいいと思うけどね。人間なんだし」


姉ちゃんは何故か男前な顔でそう言い放った。ん、男前って女の人にも使っていいんだよね?


女前……いやナイナイ!!!男前は男前だね!!!あっぶねー、日本語って難しいね!!!あはははは!!!!!






「お、男同士とかなくない???」


「なんで」


「え゙……なんでって言われると……モゴモゴモゴ」


「モゴモゴって口で言わないでくれる?腹立つから」


「は、はいっ。さーせんっ!!!」


姉ちゃんは少し遠い目をして一言「思い出すなー」なんて呟いていた。何を思い出すんだろう……。


俺はと言うと、昨日の夕飯が久々にコロッケだったことを思い出して、一人染々としていた。


母さんのコロッケ、いつも少しだけ、少しだけ焦げてるよなぁ……。
揚げ物の時だけは、獲物を狩るような鋭い目付きで「こっちにこないでっ!」って、追い出されるんだよね。







「あたしね、職場の上司と不倫してたことがあってさ、」






「コロッ……ぁ、うん。

ーーんん……ん?ふ、ふりんんんッッ?!?!?ふりんってあのよよよよく、ひ、昼ドラとかに見るやつ?????あ、いや、う、ううちの冷蔵庫で冷えてる、ぷ、ぷるぷるしてるやつだったかな??????」


俺が祈るような気持ちで、あの滑らかな卵色のぷるぷるを頭の中で描く中、姉ちゃんは残酷にも、妙にクリアな声質で俺に向かって言い放ちましたとさ。








「食い物じゃねーよ!!!」





ナイス………ツッコミで、す。



………………。





「い、いやぁ……恋は盲目だって言うもんね。燃え出したら止まらないみたいな!??……は、花火か。そうか、花火かああああああ!!!!」


そう絶叫する俺を、姉ちゃんがさらに怪訝そうに見つめていました。



「まぁ、盲目って言うのは分からなくもないわね。なんか二番目でもいいなって思っちゃったのよね……」


ディープな話を繰り広げる姉ちゃんの横で、俺は緑茶をすすりながら耳を傾けていた。