「ほーら。あったかい格好しないと風邪引くぞー」


そう言って俺の頭にいきなりニット帽を被せる先輩。大きいのか少しブカブカしたソレは、そのブカブカさのおかげですっぽり俺の頭を包んだ。


「せ、先輩。……これ、」


えーっと……
これってこれって、もしかして……?




「そんなに楽しそうな顔されたら、断る訳にもいかないっしょ」




先輩の優しく微笑んだ顔。


「春樹先輩ありがと」


にっと笑う俺に先輩は「手袋もしとけ」と言って、俺に真っ赤な手袋もくれた。




ーーーーー


そして場面は変わり俺達は今、いつもは野原のはずのそこにいたりします。


今は一面真っ白なんだけどネ☆


「俺達以外誰もいないよ、先輩っ!!」


「……さっぶいからね〜」


先輩はコートに手を突っ込むみブルブルと震えている。可愛い。


俺はと言うと、雪だるまの胴体を作るため、雪をコロコロ転がし始めたところであります。


うおおおお!!!!!いい具合におっきくなってきたぜぇぇぇっ!!!


[ボフッ]


「ゔッッ、ぐはぁッッ!??」


「ははっ、あったり〜」


いきなりとんできた雪の塊。それはもちろん先輩が作ったものだったみたいで。俺の左腕に命中しちゃった訳なのです。


俺は左腕を押さえると、ふらつく足で立ち上がる。そう、まるで気分は映画の中に出てくるアクション俳優のように…。


「フフフ…。先輩…さすが、コントロールが素晴らしいですね…。でも俺を甘く見てはいけませんぜよ。俺、三神陸斗、またの名をッッ…ゴフォ、ッッ!!?」




……今度は顔面に当たりました。
ちょ、あそこにいるお兄さん、容赦ないです。


「ははっ、また当たった!!」


とっても楽しそうに笑ってらっしゃる春樹先輩。俺は顔の雪を払って目をパチパチと瞬かせる。

何だか先輩の笑顔は心がほんわりした。
もっとその顔がみたいなって思えたんだっ。


……だからってね、勘違いしないでね。
俺は別に、雪当てられて嬉しい人ではないのです。断じて。


「えい、えいっ」


先輩に雪を当てようと、投げるのに必死な俺。


先輩はまるで、曲に合わせて舞っているかの如く、軽々と俺の投げた雪をかわしていく。めっちゃかっけーマジかっけーー。