「なんかもー正直、どうでもいっかなみたいなっ!!!てかやぱ、男同士とかさっ……」


俺は姉ちゃんに笑ってみせる。
頬がひきつって上手く笑えない。もう何もかもが情けなくて、グッと奥歯を噛みしめる。


何だろうこの虚しい感じ。ギュウって胸が締め付けられるこの感じは。




「あんた……好きなんでしょ。春樹さ「わっかんねェーよっ!!春樹先輩は、俺のっ」




ーー【憧れ】のはずだろ……?


ああいう人になりたいって。
そう思ってたんだ。今までずっと。



ーーじゃあなんでこんなにも、今胸が苦しいんだ。



溢れてくるこの涙は、気づいてしまった本当の気持ち。


「姉ちゃんッ、俺っ……」






春樹先輩のこと好きかもしんない…






言葉にした瞬間、それは確信へと変わった。俺はきっと、心のどっかで、この気持ちに気付きながらバレないように隠してたんだ。

怖いから。それはきっと、とっても勇気と覚悟がいることだから。



「覚悟だけはしときなさい。男の子でしょ?」


姉ちゃんがくしゃりと俺の頭を撫でる。姉ちゃんの言う通り、俺は男だから。ここはズバーーーッと、シャキッッッと決めてくるよ!!!!


「ダメだった時は姉ちゃん、俺にケーキ奢ってよねっ」


「オッケーだったらの間違えじゃなくて?ほらっ、気合い入れろ。ティッシュで顔拭くっ」


俺にティッシュペーパーの箱を投げ付けてきた姉ちゃんは、よっぽど俺より男前だ。
でもそんな姉ちゃんだから、話せたのかな。
照れ臭いけど、感謝しなくちゃ。




「姉ちゃん、今日は話聞いてくれてあり」


「あぁ、ぽち。あたし今から出掛けてくるからさ、部屋掃除機かけといてねっ」




「…………わんっ」



ガチャンとドアが閉まる音が遠くに聞こえる。そうだよね、これがいつもの俺の姉でした……。