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「でさ、あのクソ上司のせいで……」


(……ん、そもそも俺、何の話してたんだっけ???)



姉ちゃんの話、いい改め職場の愚痴に耳を傾けながら、俺はふとそう思いました。話が脱線に脱線を重ね、知らぬ間に本題を忘れてしまった。まぁよくあることだ。




「ねぇちょっと聞いてんの?」


「き、聞いてるよっ!!?ほ、ほら俺の耳に届くまで距離あるじゃん??時差だよ時差!!」


ビシッと敬礼を見せる俺。冷たい視線で俺を突き刺さす姉ちゃん。俺はその視線の冷たさに、思わずぶるりと身震いする。




「……で、あんた、何て言われたのよ」


「え?」


「だ、か、ら、春樹さんに何て言われたの??」


春樹先輩……?



あっ。



「あぁぁぁぁぁ!!!」


「その叫び癖やめなさいって言ってるわよねぇ。こんなんじゃ、虫だってあんたに近づきたがらないわよ」


え、俺叫んでました?
てか叫び癖ってなんぞ!?叫び癖とか初めて聞いたわ 。


「ね、姉ちゃんっっ!!そんでね、俺告白されたって言ったじゃん?」


話を戻すと「あー、そーねー」なんて、相談乗る気ゼロな姉ちゃんはふぁーと欠伸をしながら言った。


「で、どんなこと言われたのよ。"お前が好きだ"とかストレートな感じ?」


よしっ。
俺、砕ける準備はいつでも出来てるんだ。ふふ、姉ちゃん甘いでござる。告白って言ってもね、"愛の"なんて直結で考えちゃだめなんだぜっ。


俺は姉ちゃんを指差し、言い放った。





「『まだ陸斗は俺のペットだねっ』て言われましたあああ!!よっ、男前ッ!!!!」






「…………」





あれぇ……?
やっぱ「よっ、男前」は無理があったかなぁ。でもこの一言にはね、砕けちった俺を称えると言う賞賛の意味も含まれていてね、大切だと思うの。


てか、姉ちゃんが固まってなんも言ってくんないんだけど。俺、どうすればいいの?実は石にする魔法とか使えちゃう系??ちょっwwwナニソレwww俺なんか楽しくなってきちゃうんだけど……。




「クッ……」


「ね、姉ちゃん……?だ、大丈……」


「あっはっはっは!!!ちょーーーウケんだけどッッッ」


「あっははーっ!!だ、だよねー……」


姉ちゃんは爆笑だった。
腹をかかえて笑っていた。久々の満点大笑いだった。


俺は少し潤みかけた目をゴシゴシと擦ると姉ちゃんに向き直る。



「先輩って俺のこと、本当はどう思ってるんだろう……」「だからペット」「うわんッッッ」


なんと言う速攻攻撃。俺のブロークンハートは今、砕けちりました。


『大丈夫。きっと陸斗のこと、可愛い弟のように思ってるんだよ』

……とかね!!!


あるじゃんっ、慰め方が。いやでも、今考えたらそんなこと、姉ちゃんが言うわけないけどね。

そう思うと益々悲しくなった。