コンコン

「失礼しまーす」


職員室のドアをノックし、声をかけながらドアを横にスライドさせる。

開けられたドアの向こうの室内からは生暖かい風が流れてきた。

あたしは誰かいないかキョロキョロと職員室の中を覗く。


――――あれっ マジ?
誰もいない…



「おお どうかしたのか?」


どうしようかと、項垂れていると急に後ろから話しかけられビクリと体を揺らし声がした方に振り向く。

そこには、あたしと同じくらいの身長で白髪混じりの人当たりの良さそうな好好爺って言う感じのおじいさんがスケッチブックを持ちながら立っていた。


事務の人かな?

そう考えながら取りあえず聞いてみる事にした。


「あー… そのお尋ねしたい事がありまして…」



「あっ いたいた!!
じっちゃん!!これ忘れ物~~」


口を開こうとしたおじいさんの後ろから大きな声が聞こえ、少し横にズレて見るとこちらに向かって廊下を走っている男子生徒がいた。

その手にはノートが持たれている。