「おお…小畑
どうした? 聞き忘れた事でもあったのか?」

「違うってー
これ! 俺のスケブと間違えて持ってっただろ?それと忘れ物」


白髪のおじいさんが言い終わると間髪入れずに呆れたように話し出す男子生徒。

そして 目の前に持っていたノートと古いスケブを差し出す。
それを見たおじいさんは自分の持っているスケブと見比べて ああっと納得した。


「わざわざ すまんなー
いやー どおりで、軽いと思ってたんだよ」


軽いと思ってたんなら気づけよっ


心の中で毒づきながら2人のやり取りをボーッと眺めるあたし。

うーん…
って言うか、
「あっ…!」

思わず漏れた声に2人はこっちに気付き同時に見る。
そのお陰か 男子生徒の顔がハッキリと確認できた。

うんっ
やっぱり この人

「昨日の人だ…!」


あたしはこんなすぐに逢えるとは思わなくて興奮してしまっていたのか思ったより大きな声になってしまい、ましてや彼を指さし、不躾な態度をとってしまった。

声を上げてから、しまったと気づく。
直ぐに指を下ろし、背中の方へと隠す。

話してる最中なのに
落ち着けっあたし!何、デカイ声出してんのっ!


「あっ…ご、ごめんなさいっ」

――絶対、変に思われたっ~~!

羞恥で顔をほんのり赤く染めて、吃りながらも謝罪の言葉を口にする。


「えっ…ああ!
君、昨日の階段の…」

にも関わらず、彼は目をパチクリさせた後、思い出したのか昨日と変わらない笑顔を見せてくれた。


うん やっぱりいい人