松橋は伊崎の胸ぐらを掴んでいたのを離した。
山田の方へ真っ直ぐに近寄ってくる。

「迷惑かけたな、ありがと」

「あ、いえ」

「帰るぞー」

気だるそうに踵を返した男に今までギャアギャアと騒いでいた人達も何も言わずに踵を返す。

後ろを遅れて歩いている伊崎さんと松橋さんに耳を傾ける。

「伊崎…、ありがと」

「礼なら体で払え」

「お前、本当に嫌だ」

物騒な言い合いなのに二人の顔は穏やかだ。



●end……………●