Blood Smell

先生は足音を響かせながら窓の戸締まりを確認していく

優雅に白衣が舞う

「先生は…」

「ヴァンパイアではありませんよ?」

最後の戸締まりを確認して先生はゆっくり私の前を通過した


手を伸ばして先生の白衣を掴んだ


まっすぐ先生の瞳を見る
一瞬
赤黒い瞳の奥が燃えるように輝いた

「先生は…
私が嫌いですが…――?」

何も言わない
微動だにしない先生


体が震えてしまう
けど言葉は止まらない

私は顔を伏せた


「先生―…好きです……」

震えは自然と治まっていたけど
怖くて
苦しくて

顔を上げることはできなかった







「…夢は寝てから言うものだ―…」









想像はできていた
こうなることは予測できた

なのに

なのに


「しんど――……」



伸ばした手にはもう何も残っていなかった