Blood Smell

耐えきれなくなって

もう一度先生を呼ぶ


「先生…?」


小さなため息と共に
静かに目を開いた先生



キャラメル色の瞳が
私を真っ直ぐに見つめた


トクンッ…


胸が鳴る


「もし、話してしまったら…冴をさらに巻き込むことになってしまう。」

キャラメル色の瞳が微かに揺らいだ


「お前は人間だ。
俺たちの世界には全く関係ない。これ以上、冴をこっちの世界に巻き込んだら…
エリザベスの時のように…

冴を傷つけてしまうかもしれない。」



力無く先生の顔が俯いた


「冴を守りたい。
守れるのならなんだってする。そう強く思うのに…

俺が冴の傍から消えれば簡単に危険は回避できる。解っているのに…」


先生が両手を見つめた


「冴が俺の傍から居なくなるって考えた瞬間に、絶望的な闇が俺を襲うんだ。

その笑顔も、香りも、温もりも、声も…何も感じなくなってしまう事の恐怖に…
俺はいつも勝てない。

結局は傍にいてお前を危険な目に会わせてしまう。」


一身に自分を責める先生

その姿は
強靭な牙と鋼の肉体を持つ最強生物には見えなかった