｢この辺りは誰も居ないから人間の目につくこともない。｣


ダンが優しく私を下ろした
起きてすぐの高速移動
目眩がする


｢早速始めましょうよ！｣


ワクワクを隠せないエリザベスが少女のソワソワしている


｢あの、私まだなんの説明もうけてない…ですけど…？｣


二人の瞳が一瞬にして赤く燃え上がった


禍々しい緋色のダンの瞳
美しく凄まじい恐怖感を放つ茜色のエリザベスの瞳


ゾクッ！



生命の防衛本能が働く



ヤバい


背中に走る悪寒


ブアッと吹き出す冷や汗



｢このゲームはね？
人間で言うなら
“追いかけっこ”だよ。
鬼になったやつが他のヤツを捕まえる。
最初に捕まったやつが次の鬼。
簡単でしょ？｣


にこやかな笑顔の裏にある真意に私は初めて気が付いた…



私たちが子供の頃にしていた鬼ごっことは違う

“人間の目につくこともない”


ダンの言葉に隠された本当の意味は


“本能のまま、本来の姿で動ける”



それはつまり



｢じゃ、まずは私が鬼ね？

いいでしょ？｣


すでに本来の姿になっていたエリザベスが抗うことのできない
圧倒的な力で私に言った



｢え…？｣


後ずさる私



｢じゃ、スタートだ。｣



ダンの声を合図にエリザベスが私に飛びかかった


間一髪で身を屈めエリザベスをかわす


そのまま
私は全力で森の中へ走り出した