『そんなに驚くことはない。ほら、手を貸してごらん。』


老人はニヤリと笑ってさらに手を近づけてきた。


『……あっ……。』


神田はしりもちをついたまま後ずさった。



――本当に怖い。


…でも怖い人ではないのかもしれない。


今だって私に手を貸そうとしているだけではないか。


しかも笑顔まで向けてくれている。…『ニヤリ』が似合う笑い方ではあるが。



それにあの声の正体が、この老人とも限らない。


そうだ、私は考えすぎた―…



などと、考えを巡らせていると、



――グイッ



『きゃあっ!?』



『ほらほら、立てるかい?』




老人に腕をつかまれて立ち上がらせられた。


老人とは思えない力だった。


老人は更に口端を釣り上げて、神田の方をじっと見つめていた。

…いや、老人の目が神田からは見えないので見つめているか否かは定かではないのだが。



――やっぱり怖い。