『……だれ?』
神田は恐る恐る振り返った。
しかし、やはり誰もいなかった。
――疲れているのだろうか。
確かに最近受験で忙しかったし、などと思いつつ、少し気味が悪くなって早く帰ろうと思って再び後ろを振り向こうとした。
『…きゃあぁぁぁ!!!』
神田のすぐ後ろには、老人が立っていた。
『な、な、なな何なの!?』
驚き過ぎて、神田はしりもちをついてしまった。
『おやおや、驚かしてしまったかい?』
その老人は灰色のマントのようなもので体を包んでいた。
頭までかぶっていて、老人の目は見えなかった。
しかしそのせいで、老人の歯並びの悪い口が薄気味悪く際立っている。
――……怖い。
普通の老人、ではないような気がする。
神田は身の危険を感じていた。
早くこの場を去りたい。
いや、去らなくてはならない。
でも、怖くて動けない。
『大丈夫かい、お嬢さん。』
そう言って、老人は私にシワシワの手を差し出してきた。
『………っ!い、いや…』
大丈夫、と言いたかったがうまく言えなかった。
神田は呼吸を乱していた。
視線はじっと老人の手から逸らさない。
いや、逸らせない――…
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