それでも、まだ。



『フフ、私が恐い?』


マダムは短刀の先で神田の首筋を撫でた。


先程までのマダムとはまるで雰囲気が違っていた。


今のマダムは、まるで本当の…殺し屋みたいだ。


『――っ!』


耳の裏がチリッと熱くなった。

…血が出てしまったかもしれない。



『マ、ダム……?』



マダムはますます神田との距離を縮めた。



『真理は本当に素直な顔をしているねぇ。人間にしては、珍しいよ。』



そう言うと刀を下ろして神田から少し離れ、背中を向けた。



『……あの!』


私はキセルを取り出しているマダムの背中に声をかけた。



『ん?なんだい?命でも惜しくなったかい?』



マダムは火をつけながらゆっくりと振り返った。


表情はなんだか愉しそうだ。



…手が、まだ震えている。

これを聞いたら、知りたがったら、もしかしたら本当に殺されるかもしれない。


――でも。


神田はグッと拳に力を入れた。



『…この組織のことを、教えてください!』



知りたかったのだ。


自分の大切で、大好きな親友について知るために。