それでも、まだ。



――30分後。


『…きれいになるもんだね。』


『…ああ……。』



レンとジルは手伝いながら神田がテキパキと動く様子に感心していた。



『そうですよ。台所はちゃんときれいにしとかないと。よく食中毒とかになりませんでしたね…。』


神田は洗った皿を直しながらため息をついた。



『アハハハハっ、僕らは頑丈だからね。今まで全然大丈夫だったよ?』


『そ、そうなんですか…?』


神田は苦笑いしながら冷蔵庫の中から食材を探した。



『何を作るんだ?』


その様子を見たジルが神田の隣にきて尋ねた。


『えっと…、朝食なので、やっぱり味噌汁と卵焼きを作ろうと思ってます。』


『そうか。何か手伝うことはあるか?』


『あ、大丈夫ですよ?ジルさん仕事は大丈夫なんですか?』


『今日は何もない。』



『(なんか夫婦みたいだなぁ…)』


二人のやり取りを見ながら、レンは一人そう思った。



――ピリリリリッ



『あ、無線。』


レンが無線を取ると、それに気づいたのか、ジルがレンの側まで戻ってきた。



『はい。あ、アヴィルさん。…え?いますよ。……えー、面倒臭いなぁ。…アハハ、冗談ですよ。じゃあ今から行きますから。』



レンが無線を切ると、ジルの方に振り返った。


『アヴィルさんか?』


『うん。今から2人で来いってさ。まったく人使いが荒いなぁ。』

そうレンが言うと、ジルはちらりと料理している神田の方を見た。



『あー…。真理ちゃん。』


『はい?』



神田は包丁を持ったまま真顔で振り返った。


その様子は他から見たらサスペンスドラマのようである。


『僕は犯人じゃない!…じゃなくて。』



レンの意味の分からない発言に、神田は不思議そうな顔に、ジルは呆れた顔に、レンはすっきりした顔になった。


『いや、気にしないで。言ってみたかっただけだから。…あのさ、僕たちちょっとアヴィルさんのとこに行かなきゃいけないんだけど…。』



『あ、私まだ料理終わってないので、ここで待っていてもいいですか?』



『…ちゃんとカギを閉めておけば問題ないだろう。』


ジルが小声で呟いたのにレンは小さくうなずいた。


『…すぐ戻ってくるから。じゃあ行ってくるね。』



そしてレンとジルは台所を出て行き、部屋には重々しいカギを掛ける音が響いた。