部屋を出て少し歩くと、レンはあるドアの前で止まり、2人の方に振り返った。
『このドアの向こうだよ。』
そこにあったのは、分厚く、頑丈そうな扉。
『ここが台所ですか…?』
そこは完全に部屋になっているように見えた。よく見れば、カギもついている。
…部屋になっている台所なんて、初めて見たんですが。
本格的なものなのだろうか。
『まあいろいろ訳あってね。昔はドアはなかったんだけど。』
レンが扉のカギをポケットから取り出した。
『なんかあったんですか?』
その様子をじっと見ながら、神田は隣にいたジルに問いかけた。
『…盗みが激しくてな。』
ジルは苦々しく口を開いた。
『盗み?誰かが侵入でもしてきたんですか?』
『いや…、まあ、そうなんだが…。その侵入してるやつに問題があってな。』
『ものすごく質が悪いとか…?』
『いや…、…恥ずかしい話だが、そいつは幹部だ。かなりの大食いでな。他のやつの食料も食べてしまうことがたびたびあった。本当に騒がしい奴なんだ。』
ジルは目閉じて、思い出すように話していた。心なしか、表情は柔らかかった。
『そうそう、体格がいいからね〜。名前はシキっていうんだけどね、だからシキにはカギを持たせてないんだよ。』
扉を開けたレンも、楽しそうに語った。
『ふふっ。楽しい方なんでしょうね。』
神田もつられて笑っていた。
2人の様子を見て、シキという人も2人にとって大事な仲間なんだろうと思ったからだ。
『まあね。うるさいくらいだよ。さ、開いたよ。入って入って。』
レンが入っていった後に入ると、また驚くことになった。
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