それでも、まだ。


そう思っていると、レンが青い味噌汁をゴクゴクと飲んでいた。


『おいレン、それは神田の朝食だが。』


ジルが少し不機嫌そうに言った。



『僕も朝食まだだったんだよ。真理ちゃんにはまた僕が作るからさ。』



レンは他の赤い卵焼きなども食べながら答えた。


…おいしいのだろうか。



『ごめんね、真理ちゃん。もう少し待っててくれる?』


『あ、はい。レンさんも料理出来るんですか?』


『ん?僕はすごいよー?僕の料理はセシアを1週間寝込ませたから。』


『…………。』



……それってジルさんより
ひどいんじゃ……?


少し、いやかなり、違う意味で身の危険を感じた。



『…あの、良ければ私に料理させてもらえませんか?』



気がつけばそう言っていた。



『真理ちゃんが?気を遣わなくてもいいんだよ?』


レンが相変わらずジル作の朝食を食べながら不思議そうに言った。



『い、いや、これからお世話になりますし、なにか皆さんの役に立ちたいんです。』



これは本音だ。
みんなは仕事もしているのに、
自分は何もせずお世話になるだけなんて、そんなのは嫌だ。



『うーん…。いいけど、台所はあんまりいい環境じゃないよ?』


『大丈夫です!料理には結構自信があります!!』



私は小さい頃から親が仕事であまり家におらず、弟もいたので、料理はしょっちゅうしていた。


弟に喜んでもらいたくて、よく練習したものだ。



『ハハ、それなら、やってもらおうかな?』


『おいレン。』


『大丈夫だって。それに、ジルも真理ちゃんの手料理食べたいでしょ〜?』



いつの間に食べ終わったのか、レンはニヤニヤしながらジルの肩に腕をまわした。



『……?俺はもう朝食を食べたぞ。』


ジルがキョトンとして答えたのを見て、レンはため息をついた。


『え、何?自覚なし?ジルは変なとこで鈍いなぁ。』



レンはジルから離れて、食器を片付け始めた。



『真理ちゃんも、ジルに食べてもらいたいよね?』



『え?いや、レンさんにも食べてもらいたいですよ?』



そう言うと、レンはますます呆れた顔になった。


『……いやいやそういうことじゃなくてね…?』


『『……?』』


『…お互い鈍いね。まあいいや。ついておいで。台所に行こっか。ジルもいくよ。』



食器を持って部屋を出ていったレンを、2人で何がなんだか分からないまま、ついていった。