『………で?』


アヴィルは煙を吐き出しながらレンに向き直った。



『はい?』


レンは間が抜けた声を上げた。


『とぼけてんじゃねぇ。俺に頼みたいことがあるんだろうが。』


『…さすがアヴィルさん。察しがいいや。』


レンは失笑し、コーヒーをテーブルに置いた。


『お前が分かりやすいんだよ。』

『ハハ、酷いなあ。……あの子を、この組織に置いていいですか?』


『何故だ。』



アヴィルは更に顔をしかめた。
普通の人が見たら、あまりの迫力に、この顔だけで恐縮するだろう。



『調べるためですよ。事件について何か分かるかもしれないし。』


だがレンは気にも留めずに続けた。


『……人間がここにいるのは危険すぎるだろうが。』


アヴィルは罰が悪そうに顔を逸らし、煙を上に吐き出した。



『僕たちでそこらへんはなんとかしますって。』


『なんとかってなぁ……。もしもスパイならどうすんだ。』


『そうですね〜、そうなったら…








……迷わず始末するんで。』




月は、いつの間にか雲に隠れて雨が降り出していた。