それでも、まだ。



『それで真理ちゃん。どうしてあんなところに居たの?』



レンは、神田真理と名乗った人に再度聞いていた。



実際、自分は本当にこの人のことを知らない。



たが、さっき目が合ったときに何かが胸のなかに渦巻いた。




この人のことを知りたくない。
…でも、知りたい。





『わ、私にも分からないんです。友達のお墓参りに行って、帰ろうとしたら変な老人に会って、その友達にもう一度会いたいかって聞かれたんです。』



『…老人?』


レンは何かに引っ掛かったように神田に問い返した。


『はい。でも友達は死んだから会えるはずないって私は言ったんです。そしたら老人が機会を与えるって言って、しばらくしたら気を失ってしまいました。それで気がついたらあの森にいたんです。』


『そして熊に会ってセシアに助けられた、と?』



『はい……。』



レンは少し考える仕種をした。



『ふぅん…。機会って何の?』


『それは私にも分からなかったんですが…、運命がどうとかって言ってました。』


『運命ね…。その老人はどんな感じだったの?』


『えっと…確かマントのようなものを被ってて、目は見えませんでした。杖みたいなのも持ってて……、そうだ、その杖で軽く突かれて、それからすぐに気を失いました!』




『『―――!』』




レンとジルが同時に息を呑むのが分かった。




なんだ?何が引っ掛かったんだ?


神田もキョトンとしていた。




『…真理ちゃん、ひとつ聞いてもいいかな?』



真剣な顔をしてレンは口を開いた。


『はい?』



『…その友達っていつ亡くなったの?』





『3ヶ月前です。』





『『―――!!』』




また、レンとジルが息を呑んだ。
というか、ひどく驚いていた。




この2人がここまで動揺するなんて珍しい。

いつもはほとんど取り乱すということはないのだが。


『……そうなんだ。とりあえず、一旦組織に戻ろうか。ここも直に危なくなる。』



そう言ってレンは立ち上がりそのまま廃墟を後にした。




『…また、少し失礼する。』


『わっ』



ジルも神田を抱えて立ち上がった。

神田はちょっぴり顔が赤くなっているようだ。



私もなんだかモヤモヤしながら2人の後を追って廃墟を出ていった。