それでも、まだ。


―――――――

な、何?

何が起こってるの……?



結菜っぽい人が助けてくれたと思ったら、なんか男の人が出てきてあの熊の攻撃を片腕で受け止めてて、しかも熊の方が怯えてるし…。




というか、本当にあの子は結菜ではないのだろうか。


『違う』と言ったときの結菜の眼は、確かに冷たかった。



でも、でも、あの眼は――…。





『おい、大丈夫か?』



ハッとして横を見るとそこには、長い黒髪を横に流して結んだ長身の男の人が立っていた。



顔つきも整って、切れ長の目がクールっぽいなぁ…じゃなくて!


『は、はい。大丈夫です。』


そう言って、なんとか笑った。



『……!あんた、人間か…?』


男の人は目を見開いた。


『え?はい、そうですけど…。』

何を言っているのだろう。この人は人間でないのだろうか?


『……まぁ、話は後だ。立てるか?』



『あ、はい……痛っ!』


足首に痛みが走った。

神田は先程足首を捻ってしまったのだ。…どうしよう。うまく立てそうにない。



『捻ったのか?』



そんな自分を見て、この男の人は心配そうに言った。




『グ、グギャァァッ!!』




『『!!』』



そのとき怯えていた熊が暴れだした。



『…しょうがない。……おい、少し失礼する。』



『え?……きゃあっ!』



私はこの男の人に横向きで持ち上げられた。…いわゆる、お姫様抱っこだ。



す、すごく恥ずかしいんですが……。

神田は顔が赤くなるのを感じた。


『おい、レン!!もうそいつは正気を失っている!ひとまず逃げるぞ!』


男の人は熊と対峙している男の人に呼びかけた。



『よっと。うん、そうだね。じゃあ僕が撒くよ。セシアと一緒に行っててよ。』



熊の攻撃を軽々と避けながら、もう一人の男の人は言った。



『分かった。セシア、行くぞ。』



『…………はい。』



そして、私たち3人は、この場を後にした。




このセシアと呼ばれた人が、違うと言われたにもかかわらず、結菜であると神田は確信しながら。