『情報を整理するか。』
神田が落ち着いて暫くして、2人は座りなおした。クロはセシアの膝の上に飛び乗って丸まった。
『…まず、私はいつからかは分からないけれど、人間界にいた時期があった。しかも結構な期間。名前を石井結菜として。そしてその間に、神田と出会って、仲良くなった。』
『そして3か月前、セシアは黒組織に殺されて、この世界へと戻ってきた。セシアのお母さんはセシアが産まれてすぐに亡くなったわけじゃない。』
ピラ、と神田はセシアとセシアのお母さんが写っている写真を取り出した。2人とも楽しそうに笑っている。
『でも、なんでセシアはあのとき私に産まれたあとすぐにお母さんが亡くなった、って言ったのかな。セシアが嘘ついているようにも見えなかったし…。』
セシアは写真の中の母をじっと見つめていた。まるで母の記憶を取り戻そうとしているかのように。
『なんでだろうな。…そして3か月前は今私たちがいるこの漆黒の森で<ある事件>が起こり、均衡が乱れてしまった。そして一週間前、漆黒の森が闇に飲み込まれて、そのすべてがシーホークのものになりつつある。』
『<ある事件>はセシアのことと関係があるかもしれないね。…黒組織の目的は、世界政府を滅ぼして、人間界を支配することなのかな…?』
『目的についてはまだ他にもあるかもしれないが、今言ったことも含まれてはいるだろう。そして黒組織は危険な薬を作っている…狂気に満ちたSeakはあのとき消えた村人の可能性が高い。』
そこまで整理すると、2人とも落ち着くように深呼吸をした。
『他のみんなは大丈夫かな…?』
神田は不安げに瞳を揺らした。シーホークが腕をこちらに向けただけで、一瞬でどこかへ消えてしまった幹部たち。神田はぞくりと寒気がした。
『…そんな簡単にやられるような人たちじゃないよ。大丈夫だ、きっと。今は、私たちに出来ることをしよう。』
そう言って神田を励ますセシアの瞳も、不安さがあるのが神田には分かった。しかし心配させまいと気遣ってくれるセシアに、神田もこれではいけない、と頷いた。2人とも不安なのは一緒なのだ。
『ナージャさんの言ってた癒しの泉を探さないと…でも今私たちはどこにいるんだろう。』
『とりあえず逃げるのに必死だったからな…』
神田は改めて自分たちの状況の危険さを実感した。追ってきていないとはいえ、ここはまだ漆黒の森。シーホークには場所がばれているかもしれないのだ。
神田は底知れぬ広さの森を見渡した。
