それでも、まだ。



―――ビュンッ


『っ!?』


熊が投げた木が頬をかすった。




何…?この熊。どんだけ怪力なの…!?


神田はガタガタて震えはじめた。


『ガルルルル……グガァ!!』



『きゃあっ!』



熊が振りかざしてきた爪をなんとかかわしたが、そのときにこけて足を捻ってしまった。



『痛っ……。』



逃げないと、殺される……!


そう思うのに、足は痛くて動けない。




『グガァァァァァッ!!!』



『―――っ!』



…ああ、殺される――




そう思って目を閉じたときだった。





―――ドカァァン



『グギャァァッ!』



『…………?』



自分自身が何も痛みを感じなかったことを不思議に思い、ゆっくり目を開けた。



『―――!?』




すると今度は、自分と熊の間に立った人を見て、目を見開くことになった。




スラッと伸びた手足、長い黒髪をポニーテールで一つに縛った頭、大きくて切れ長の目をもつ美人で整った顔。


こんな暗闇でも絶対に間違うはずがない。


ずっと一緒に居たのだから。



それはまさしく――、



『大丈夫か?』




私が大好きだった親友、石井結菜だったから。