それでも、まだ。


――――――――


………ん……あ、れ……?


意識を取り戻し目を開けると、辺りは真っ暗だった。


というか、どうしてこんな所にいるんだっけ?



確か…、結菜の墓参りに来て、帰ろうとしたら変な老人に会って……、



そうだ、老人になんか機会を与えるとかなんとか言われて何か知らないうちにいつのまにか気絶したんだ…!



神田はガバッと起き上がった。


……それで、ここはどこ?



辺りをキョロキョロ見渡すが、お墓なんてなく、老人もいなかった。



あるのは、闇に包まれた木々。

僅かな光しか頭上から差し込んでおらず、ぼんやりと辺りを照らしていた。


老人に連れてこられたのだろうか。


それとも夢なのだろうか。



どっちにしてもここは不気味だ。なんだか静かすぎる。

でもここを動いていいのだろうか。


もしかしたら老人は戻ってくるかもしれない。それにとても暗いし。


…しばらくここで待っていよう。


そう思って座り直した。

……が。




―――ガサ…ガサ…


『―――っ!?』



いきなり茂みの向こう側から音が聞こえて、神田は慌てて立ち上がった。


何かがこちらへやって来る……?


あの老人であろうか。



――ガサ…ガサ…



音はどんどんこちらへ近づいてくる。



『あ、あの…、老人ですか?』


恐る恐る声をかけたが、返事はない。


それどころか、こちらへやって来る速さがますます速くなったような気がする。


というか、走ってやって来ている。




――ガサガサ…バキッ




そして現れたのは――…、




『きゃあぁぁぁぁ!!』



得体のしれない闇に包まれた大きな熊だった。