それでも、まだ。





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『……さま、真理様』



神田はハッとして目を開けた。



『おはようございます、真理様。』



『…おはようございます。』



そこには真っ黒なメイド服を着た女の使用人が立っていて、神田が目を覚ましたのを見届けるとそばから離れて朝食の準備をし始めた。




昨日モニタールームからもとの場所に帰ってきた神田はシーホークにもう遅いからと用意してくれた部屋へと案内された。…使用人付きで。


部屋は1人で過ごすには十分すぎるほど広く、ベッドはもちろん、さまざまな家具は黒で統一されていて、豪華なものであった。




『明日から3日間、私とリーヤは組織にはいないので、何かあったらこの人に尋ねてください。』



神田はシーホークが言った言葉を思い出しながらぼんやりと使用人を見た。
使用人の表情は無表情であり、長い黒髪をひとつに縛ってまとめている。



『…慣れないなあ。』




ポリポリと自分の頬を掻きながら神田は寝ていたベッドから降りた。



今まで人生で専用の使用人がいるという経験をしたことがない神田は今の状況にまだ戸惑っていた。




『どうぞ、朝食です。』



『あ、ありがとうございます!』



朝食はとてもおいしく、神田は一気に食べた。



『今日からこの屋敷を見て回るのですよね?昼食もここに置いときますので自由に食べに来てください。夕食のときは呼びに参りますね。』



『あ、私1人で回っていいんですか?』



『問題ないですよ。そう仰せつかっていますので。希望でしたらご一緒に参りますが。』



『い、いえ!大丈夫です!』




神田は慌てて返事しながら心の中で安心した。


この使用人が一緒だとなんだか調べるのもやりにくそうだ。




『ごちそうさまでした!じゃあ、行ってきますね!』



神田はそう言って立ち上がると、用意してくれた服に着替えて逃げるように部屋を出ていった。