それでも、まだ。




『蘭さんのお店が……?』



神田が驚きながら言うと、シーホークは頷いた。



『彼女の能力は空間転送です。すなわち、自分だけでなく、あらゆるものを瞬時に違う場所へと転送することが出来ます。さまざまな商品を扱えるのもそのおかげですね。まあ、さすがに人間界とこの世界の間をSeakや人間を転送することだけはちょっと難しいようですが、物は転送出来る。だから人間界にしかないもの、夜の世界にしかないものを物々交換してこの世界を支えているのも彼女です。』



『蘭さんにそんな能力が…』



神田が蘭の人の良さそうな顔を思い出しながら呟いていると、シーホークは確認が終わったのか、立ち上がった。




『彼女は世界会議での両世界間の仲介人でもあるんですよ。…さあ、終わりましたし、一旦戻りましょうか。』




『……あの!』



部屋を出ようとする背中に、神田は呼びかけた。



『なんで、こんなにたくさん、人間界を観察しているんですか?』



神田の呼びかけに、シーホークはピタリと足を止めた。



少しシーホークの纏っている空気が変わった気がして、神田は思わずギュッと掌を握った。



『なんでって……』



シーホークは振り返りながら言った。



『人間は嫌いですが人間界のために働くのが私たちですからね。普段からちゃんと見ておかないと、いざって時に駄目でしょう?』



振り返ったシーホークの表情は今まで通りで、恐怖感は感じなかった。




―――気のせいかな…?





神田は僅かに湧き出た疑問をしまいこんでシーホークの後についていった。