それでも、まだ。



灯りをつけ、シロを探そうと部屋を見渡した神田は、部屋の悲惨な姿に、目を見開いた。


ーーここは、先程襲撃があった場所だった……。


部屋の窓ガラスはほとんど割れて飛び散ってしまっていて、またいつもはきちんと本棚に並んでいる様々な本は、あちらこちらに無造作に落ちている。


そして至る所に血が固まったのか、赤黒いものが点々とあり、神田は目をつむりたくなった。


改めてみると、どれだけ大変な事態が起こったのかが身にしみて分かった気がした。…自分はその大変な事態を起こした組織に今向かおうとしているのだが。



『…にゃー…。』



いつの間にかシロは神田の足元に擦り寄っていて、紅い眼で切なげに神田を下から見上げた。



その眼が神田を心配しているようで、思わず神田はしゃがみ込んだ。



『…シロ、私は何を信じればいいのかな。……私は、何も知らないの。この世界のことが、全然分からないよ…。』



白猫の頭を撫でながらぼんやりと独り言のように呟くと、掌の下の温もりはまたスルリと抜け出し、部屋の奥へと入って行く。



神田がハッとして立ち上がると、シロは神田の少し先で止まっていて、こちらを伺いながら長い尻尾をゆらゆらと揺らしている。



『…ついて来いって言ってるの…?』



神田が問いかけるように言うと、にゃあと鳴き、更に進んでいく。



ーーどうやらそうらしい。


神田は黙って足元に注意しながらシロの後をついていった。




少し進むとシロはある本棚の前に座っていて、カリカリとそこに入っている本に爪を立てている。



『……?そこに何かあったっけ?』


確かこの辺の本棚には工学的な本がたくさんあって、あまりそういう分野を得意としない神田は、ほとんど手をつけたことはなかったが…。


ひたすらに爪を立て続けるシロに後押しされるように、神田はそこの本に手を伸ばした。




ーーーペロッ


『…ひゃっ!』


伸ばした手を、不意にシロが舐め、思わず神田はその本を押した。…が次の瞬間。



ーーカチッ



『きゃあぁぁぁ!』



そのまま本棚ごと回転し、前に体重をかけていた神田はそのまま一緒に本棚の後ろへと突っ込んでいった。



ーーあぁ、忍者みたいだなぁ……



そんな、呑気なことを考えながら。