――ガキンッ
『――…くッ!』
セシアは刀の抜き際になんとか男の突きを受け止めると、そのまま押しやってなんとか距離を開けた。
槍が掠った腕がビリビリと痛む。
『…へぇ。なかなかやるじゃねぇかい。』
男は槍を肩に担いで表情を崩さずに愉しそうに言った。
『(速い………。)』
セシアは姿勢を低くして構え、男を睨み上げた。額には滅多に掻かない汗が一気に溢れ出している。
――全く動きが見えなかった。
動きは疎か、空気の揺れさえも感じなかった。…自分は風の能力を持ち、風の揺れに人一倍敏感だというのに。
『…風だったか?お前の能力はよ。』
男の言葉に、セシアは眼光を更に鋭くさせた。
『…何故それを知っているんですか?』
セシアの絞り出した言葉に、男は口端を更に吊り上げると――…
『…お前と俺が会ったことがあるからに決まってんだろ?』
そして再び姿を消した。
『…っ…何処へ…!?』
セシアは視線をあちらこちらに忙しなく動かしたが、何処にも姿は見当たらない。
だが、必ず近くにいる。気配が、…そして殺気が、自分を射抜いているのを感じるのだ。
『……上だぜぃ?…雷鳴柱!』
『……!!』
――ドゴォォォォンッ!!
凄まじい地鳴りが辺りに響いた。
『…くっ…っ…!』
持ち前の速さでなんとか直撃は免れたセシアであったが、左足に攻撃を受けてしまった。
セシアは倒れ込み、男の方へとなんとか体を向けた。
左足からはドクドクと鮮明な血が流れている。
『…はぁっ…っ……、雷の、能力……っ…?』
セシアが息を切らし途切れ途切れに言うと、男はフンと鼻を鳴らした。
男の真横には先程の攻撃で地面にポッカリと穴が空いており、セシアは背筋を凍らせた。
『…そうだ。よく避けれたじゃねぇかぁ。』
男はゆっくりとセシアに近づいてきた。
セシアは動くことが出来ず、ただ精一杯男を睨み上げた。
『私と…、会ったことがあるって…っ…どういうことです?』
息を整えながら聞くと、男はセシアの目の前まで来て立ち止まり、ニヤリと笑った。
『…教えてやろうか?お前に起きたことをよ。』
そう言うと、男は頭まで被っていた黒いマントを脱いだ。
『…金髪…?…っ!』
男の髪は月光に照らされて金色に光っていた。
そしてその姿を見た瞬間、セシアの脳裏に何かが過ぎった。
――(…来るな!…やめて…!)
セシアは無意識にガタガタと震え出した。
――(…誰か…助けて…!)
記憶の断片だろうか。セシア自身の奥深くから、何かが溢れ出している。
…この金髪の男を見た瞬間から。
『…俺が、今のお前を作るきっかけを作ったんだぜ?』
男は槍を振りかざした。
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