『………誰?』
セシアがバッと振り向き、刀に手を添え姿勢を低くして言うと、男は頭までマントを被ったまま、ケラケラと笑った。
『そう恐い顔すんなって。言うこと聞いてくれりゃあ何もしやしねぇぜ?』
男は柱から離れて一歩セシアの方に近づいた。
『言うことを…?』
セシアもジリジリとそのままの姿勢で後ずさった。
――この男はヤバい。
セシアは直感で感じていた。
男は笑ってはいるが、纏っているオーラのようなものから先程から殺気を見え隠れさせているのをセシアは感じていた。
無意識なのか、それともわざとなのか――…
そして何より、男に話し掛けられるまで、セシアは全く気配に気づかなかったのだ。
『…あぁ。…その手に持ってる封筒を渡してくれるかぁ?』
男はニヤリと笑った。
『…!…この封筒が何故必要なんです?』
セシアが封筒を握りしめ尋ねると、男は一瞬顔を歪めが、すぐにまた不敵に笑った。
『…知らない方が身のためになることもあるって知ってるか?』
『……残念ですけど誰かも分からない人に貴重な情報を渡すわけには行きませんから。』
セシアも無理に笑って刀の柄を握り直した。もしかしたら表情は引き攣っているかもしれない。
――頭の中ではしきりに警笛が鳴り響いている。
早く渡してしまえ、と。
『…はは、そうかい。じゃあ……………交渉決裂だぜ?』
男がそう言った瞬間、かろうじて押さえられていた殺気が一気に溢れ出した。
『――…!』
セシアが素早く封筒を懐にしまい、刀を抜こうとしたとき。
『……遅いぜ?』
『…な……!?』
気づいたときには男はセシアの真横にいて、手には槍を持ちセシアに向けて狙いを定めていた。
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