それでも、まだ。




レンは2人の方へ振り返った。



『…皮肉なものだよね。僕達の存在は、人間政府の手の中にしかない。存在を素直に認めてもらえない。世界会議で、いつもそのことを痛感させられるよ。』



レンは顔を歪めさせて言った。その表情は、今の風景と同じように、とても寂しそうなものに感じた。


セシアも何だか胸が苦しくなり、眉を寄せたが、レンはすぐに表情を戻し、へらりと笑った。




『…でも。』




レンは天を仰いだ。セシアは不思議に思ってレンを見つめた。




『絶対に、変えてみせるんだ。』



その思いがけない発言に、セシアは目を丸くした。




『…絶対に、この世界を変えてみせる。堂々と暮らせる世界へ。人間と本当に共存出来る世界へ。それが、僕達の約束――…。』




レンの表情は生き生きとしていた。悲哀も恨みもない、純粋な表情だった。



『…約束……?』



セシアが呆気に取られながら呟くと、隣にいたシキがポンッとセシアの頭に掌を乗せた。



『せや。俺らが変えんとあかんのや。人間界に真理みたいな奴がいてくれる限りな。』



シキも優しく笑っていた。



――世界会議がどんな意味を自分達にもたらすのかは、まだ分からない。約束が何なのかも。



でも、きっと大丈夫だ。自分達も、神田も。



きっと、うまくいく――…



根拠はないが、そのときセシアは直感で思ったのだ。


セシアも少し微笑んだ。




『…よっしゃ、はよ行くで!』



そしてシキが手を離して、腕を振り上げて力をグッといれたとき。






『…もし、組織の方々ですかな?』



杖をついた老婆がシキの真横に佇んでいた。



『のわぁっ!!』



シキは驚いて横に飛び退いて尻餅をついた。



『…あ、もしかして村の方?』



レンが思いついたように言うと、老婆はふぉっふぉっと愛想よく笑った。



『やはり組織の方々でしたか。見たことのある服装だと思いまして。わざわざすいませんねぇ。ささ、村にお入り下さいまし。』



老婆が手招きするのを見て、セシアは首を傾げた。



『え?村ってどこに…?』



セシアはきょろきょろと周辺を見た。


辺りは一面砂漠なのだ。村らしき所は何処にも見当たらない。



老婆はにこりと皺の濃い顔を綻ばせると、地面を杖で突いた。



『村は、地下にありますので。さぁ、こちらでございます。』



杖の先を見ると、隠し階段のようなものが砂の合間に見えた。



『…この砂漠じゃあ、さすがに住めないからね。…行くよ。』



レンが小さく耳打ちしたのにセシアは頷くと、老婆の後を追った。





『…おーい、やっぱり俺の存在は無視かー?さ、淋しくなんかないんやからな!!』




尻餅をついたことを誰にも触れられなかったシキは、涙を拭いつつ、3人の後を追ったのであった。