宴が開かれる部屋に入れば、皆が頭を下げ王と那智を待っていた。



華族の位順に並ばれている為、一番前には那智の父と兄がいる。


下を向いているので顔は見えないが、那智は懐かしさに涙が出てきそうになる。



「ほら早く歩けよ」



那智にしか聞こえないくらいの声で、志高が囁けば那智はハッとしたように顔をあげる。



「申し訳ありません・・・・」



志高の前ではコロコロ変える表情が、今は人形のように何も映していない。



「お前が席につかねば、皆顔をあげれん。行くぞ」



このまま顔を下げさせておくわけにもいかない。



那智は重い体を引きづりながらも、前を向いて歩き出した。



志高と那智が席につけば、宴が始まった。




王から那智を正妃にすると報告をした時の皆の反応は・・・・笑えた。



喜びお祝いの言葉を言う者に、あからさまに嫌な顔をする者、那智に取り入らんとばかりに近付こうとする者・・・色んな思惑がこの場所には溢れている。



そんな中・・・那智はたった一人の人から目が離せなくなる。