志高の様子で自分の父を思い出す。



あの父の事だ。



那智が毒物を処理するのを辞めても、何だかんだと難癖をつけ志高に嫌がらせはするだろうが・・・ここは志高の気持ちを汲んだ方が良いだろう。




「はぁ・・・・仕方ありません。では、美沙に任せる事にしましょう」



そこは王直属の部下にでも処理させてほしい所だが、そこまではさせてくれそうにない。



「仕方がない。これからはその美沙と言う者に処理させるようにしろ」



素直に心配だと言えば可愛いものをと思いつつ、那智はうなずく。




「仰せのままに。心配してくれる者がいるというのは、やはり嬉しいものですね」



一言余計な言葉を付けた為、志高をイラつかせることになる。



「心配などしていない」



顔を背ける志高に、楽しそうに笑いながら那智は言う。



「妾は別に志高様だとは言っていませんが?」



からかわれているとも知らず、その言葉に反応してしまう。



「そんな事知っている・・・」



志高の姿に那智は面白くて仕方がない。



「ふふふ。本当に面白い人ですね。志高様がたとえ心配してくれていなくても、妾は志高様を心配していますから・・・死なない様に、頑張りましょう」



頑張って死なない様にと言うのも変だが、死なない様に生きる事の難しさを二人はよく知っていた。



「そうだな。死なない様に・・・頑張ろう」



最後は素直に話す志高に那智も笑顔になる。



「でわ・・・・今日はもう寝ましょう。明日からが・・・・本当に大変ですわ」



那智の有難くない予言はそのまま現実のものとなった。





普段姫の元に泊まらない王が泊まり、歌や琴まで望んだ。その噂は瞬く間に後宮と朝廷を駆け巡った。