双華姫~王の寵姫~

はっきり言わなければこの男には通じない。



それを理解した那智は、志高の目を逸らすことなく見つめ断言する。





「王の元に嫁いだ以上、それが許されない事は分かっています。今日志高様が妾の元に来た時は覚悟し、諦めました。しかし・・・」




思いの外王は話が通じる相手だった。




「志高様・・・このままではいけないのは妾も分かっています。けれど・・・今しばらく時間を・・・心の整理をつける時間を・・・時間を下さい」



あの人を思い出にできる時間を・・・。





王の元に嫁ぎもうすぐ一か月になる。




周りからすればもう一か月になるその時間は、那智にとってはまだ一か月だった。





一か月で愛した人と過ごした時間を思い出になどできなかった。




その何倍以上の季節を、時間を共に過ごしたのだから・・・。




泣きそうな顔で笑う那智。



「やはり・・・これは妾の我儘ですね」





黙っている志高に申し訳ありませんと告げ立ち上がり、床の準備をしよとする那智の手を志高が掴む。




驚き振り向く那智の目に、今まで見た事のない迷う志高の姿があった。