双華姫~王の寵姫~

那智の名前の由来を昔聞いた事がある。




那智の故郷にある人々から愛される川…那智の川から名前をもらったのだと。那智の川のように、人々に愛される子になりなさい。





両親はそう言って笑っていた。




名前は親からもらう初めてのプレゼント…生まれた喜びを、赤子の将来を祈り慈しみつけるものなのだと母が言っていた。




それを…ついでにつけられたら…那智は同じ忌み子ながら、愛される事を知らない王をみる。




王は那智を人形のようだと言うが、那智からみれば王もまた人形のようである。




いつだってその瞳には何もうつしていない。





「しかし全て一緒にするわけにはいかなかったのだろう…ただ一つ違う場所がある…兄上が太輝(たいき)私が志高(しこう)だ」






太陽の輝き…陽の国に生まれた王の為にあるような名前。




王は遠くを見ている。





名前は呼ばれる為にあるのに…この王は呼ばれた事が果たして何度あったのだろうか。





「名前…志高様と言うんですね」




名前を呼ばれた事など一度もなかった。いつだって呼ばれるのは兄太輝だけ。





「志し高く…それで志高様なんですね。良いお名前です」