「この文は今回の騒動が起こってすぐに・・やってきた」




急いで書いたのであろう志高の文字は、少しだけ歪んでいる。




那智が帰ってくるか、逃げるか分からない状況で・・・それでも万が一を考え送ってくれた文。



「主上は・・・・お前を帰すなと言っている。王の命令だ」



王の絶対命令。従わないわけにはいかないと・・・・父は言っているのだ。



那智は心を決めた。



「でしたら・・・有栖川当主。私は正妃として命令します。すぐに私を城に帰しなさい」



自分が・・・父に・・・正妃として命令する日が来るとは思わなかった。



那智は出てきそうになった涙を必死に押し戻す。



父も・・・那智の言葉に驚きを隠せないでいる。




「王の言葉を取り消せるのは・・・・・正妃だけです。だから・・・今すぐ私を城に」





誰に何を言われても・・・那智の生きると決めた場所は・・・・あの城だった。