双華姫~王の寵姫~

「・・・・・何かあったのだろうな」



それだけは分かる。



でなければ、父が那智を後宮に帰さないという行動に出るはずがない。



その時・・・那智の耳に侍女が廊下を歩いて来る音がする。




いつも運んでくる昼餉の時間には早いはずだが?と思えば・・・・柚那からの文だった。




「那智姫様。柚那姫様からの文にございます」




それだけ告げ、文を置くと・・・何か聞かれる前にと侍女は去っていく。




忌み子の那智が嫌だとかではない。




反対に自分の愛する姫に何か聞かれても答えられない事が・・・辛いのだ。




柚那からの文は・・・柚那にしては珍しく、一言しか書かれていなかった。




【至急帰る】



その四文字。



四文字に込められた思いに、嫌な予感は当たるのだと思った。