那智が顔を上げれば、柚那が頭を抱きしめてくれる。



柚那の心臓の音が、トクントクンと那智の耳に届く。



「どこにいても、何をしていても・・・那智の幸せを願ってる」




その声があまりに優しくて、那智は柚那の胸の中で・・・昔の様に大声で泣いた。




(これで最後にするから・・・・今だけは・・・・)




那智と柚那しかいない梅の木の下。




そこで那智は・・・たくさんのものに別れを告げた。




今まで諦め押し込んでいた想いと・・・本当の意味で決別したのだ。




後宮に・・・朝廷に帰り、生きて行くために。




諦め志高の元に行くのではなく、自分の意志で・・・戻るために。




那智の想いは・・・柚那と梅の木だけが知ってる。