双華姫~王の寵姫~

意地が悪い質問を王は面白そうに幸也に投げかける。その一言で面白いくらいに幸也の顔色が変わる。



「そのような質問を私に聞かれても困ります」




幸也の顔には心底迷惑だと書いてある。王もそれは分かっているが、またも問いかける。




「そう言うな。今日はお前が選ぶ姫以外のもとに行くことにする」



意味不明な言葉が幸也に返ってくる。幸也の額にピキッと青筋が浮かんだように見えたのは王の勘違いではないだろう。




王は楽しんでいた。年頃だと言うのに浮いた噂ひとつなく、堅物だと言われる幸也がどの姫を選ぶのか。




今王の後宮には8人の姫がいる。




全て華族の姫であり、第一から第八の位の家から一人ずつ嫁いできている。第二の位の家からは、森ノ宮ではない方の華族泉ノ宮から姫が来ている。




王が華族から姫を取る場合、その位の家たちに話が行き、どの家が嫁がせるか話し合いが持たれるのだ。



第二の位に話が言った時も森ノ宮と泉ノ宮との間で話し合いがあり、今回は泉ノ宮から姫を取ることになったのだ。





王はどの娘が良いとその整った顔に人の悪い笑顔を浮かべ、幸也の返事を待っている。




幸也は一つ息を吐くと心を決めたように、一人の姫の名前を呟いた。