「那智華・・・那智の華が咲く故郷に帰りたいか?」



そう聞けば・・・人形のようだった那智の目に少しだけ光が宿る。



「そうしたら・・・・お前は戻ってくれるのか?」



志高が好きだった・・・華のような那智に。


「ただ・・・ずっとは帰してやれん。一の姫の輿入れの祝いに帰すという事にしてあるからな・・・」


それが志高にできるせめてもの償いだった。




せめて少しの間だけでも・・・那智の愛した場所に帰してやりたい。



例え・・・そこで・・・那智が龍に会ったとしても・・・志高は責めるつもりはなかった。




那智を人形に変えてしまった自分では・・・那智を人に戻すことはできない。



その時、ずっとただ聞いているだけだった那智に変化が現れた。



「故郷に・・・那智の川に・・・・帰れる?」



久しぶりに聞いた那智の声は、今にも消えてしまいそうなほどか細いものだった。



それでも・・・・那智が久しぶりに話した。


それが志高には嬉しかった。