「…今日の欠席は…二人か」


クラス名簿を見ながらそう言ったのは俺達の担任。

ハキハキとした体育会系の先生で、生徒からはそれなりに人気者だ。

HRの時間、いつもこのように出欠をとる。


「…田中は何故休みだ?」

田中というのは、俺のクラスの、ある男子だ。(席が隣で、珍しく名前を覚えた)

「熱でたって聞いてますよー」

一人の男が先生に向かってそう言った。
先生は「そうか」と一言言って、再びクラス名簿を見た。



「…河合も休みか」

『河合』と聞いた瞬間、クラスの多数の人々が、『河合』の席を見た。


その席は、俺が朝眺めていた席。


その『河合』というのが、
あの、『変わり者』だった。

初めてあの女の名前を聞いた。
河合は、結局あの後、姿を見せなかった。


「なんで河合さんって、休みばっかなんだろうね?」

ある女子がそう言った。

休みばっかと言われて、確かにそうだったかもしれないと思う。

なんせ、名前も知らない上に、他人が休んでいようが休んでなかろうが全く気にもとめない俺だ。

あの女がよく休むかどうかなんて知らない。


だが、あの女を見たときに、初めて見た気がすると錯覚したのは、やはり休んでいて、あまり姿を見せなかったからかもしれない。


「体調が悪くなりやすいか、それかいじめとかにあってて不登校のなりかけ、みたいなものかもよ?」

「でも昨日普通にきてたよな」

生徒たちは、口々にあの女の話をした。そろそろクラスが騒がしくなってきたとき、先生が「静かにしろ!」と注意をした。

「とにかく、HRはこれで終わりにする。起立」


先生の少々荒さのある号令に、ゾロゾロと生徒たちが立っていく。



俺は、違和感を覚えた。

先生は、田中の休みの理由は聞き出したにもかかわらず、あの女のことにはほとんど触れなかった。


ただの先生のきまぐれであるならそれまでだが、何か隠し事をしていそうでしょうがない。

そして、女はよく休んでいるという。

それもまた、不審に思える行動だ。



しかし、別段先生から聞き出すつもりもなかった。

俺が他人のことに踏み込むなんて、おかしな話なんだ。