「…悪いが、鍵を閉めたいから、外に出てくれないか?」
いがいに棒読みになってしまった。
初対面としては少しきつい言い方だったか。
しばらくすると、その女はこちらを見た。
逆光のせいでなかなか表情は読み取れなかった。
「…私が閉めておきます。」
その女の声は、見た目に似合わず、高く可愛らしい声だった。
全体的に落ち着いた雰囲気で、どことなく寂しそうにも見えた。が、だからといってどうということはない。
鍵閉めを引き受けてくれると言うので、俺は平凡にも「そうか」と答えて、一番近くの机の上に鍵を置いておいた。
彼女は、俺が鍵を置いたのを確認すると、すぐに最初の体勢に戻り、また夕焼けを眺めた。
しかし夕日は沈みかけていて、教室も真っ暗になりかけていた。
俺らしくもないが、なんとなく暗闇が気にくわなくて、電気のスイッチまで歩んでいくと、
「つけないで」
と、少し声を張り上げて言った。
こんな真っ暗な教室にずっといるというのか。
この女の考えていることが不気味でしょうがない。
女は果てしなく夕日の落ちた暗闇の空を眺めていた。
俺は、これ以上彼女に踏み込んでも意味がないと考え、「鍵、頼む」と一言置いて、さっさと教室を抜けた。
彼女と話をして分かったのは、
やはり、『変わり者』であるということだった。
