カトリック教会の学校なので、毎朝ミサがある。

普段は賛美歌を歌い、マリアさまに祈りを捧げる。

日曜は一般の信者の方々が来られるので私たちは行かない。

時々、日曜に神父さまが来られたときは月曜まで滞在され、月曜の朝のミサの時間にお話をされる。

もう夏も過ぎようとする頃、私は神父さまに声をかけられた。

゛真中さん、あなたの絵を見せてもらいました。″

えっ!驚いた顔をした私にシスターテレサは優しく話してくれた。

゛ごめんなさいね。神父さまにあなたのことをお話ししたらどうしてもあなたの絵を見たいと言われたの。″

恥ずかしくて真っ赤になって下を向いたままうなずいた。

神父さまは優しく微笑んで、
゛お願いがあります。マリアさまを描いてみませんか?″

゛えっ?私が?″

驚いて、神父さまの顔をじっと見てしまった。

゛あなたの純真な感性であなたのマリアさまを見てみたいのです。いつまでかかってもいいですよ。よろしいですか?″

゛はい″

どうしよう…どう描けばいいのかしら…

真っ白な画用紙を前に頭の中も真っ白になっていた。

゛なやんでいますか?″

シスターテレサが聞いてきた。

私はうなずいた。

゛じゃあマリアさまに会いに行きましょうか。″

そう言ってシスターテレサは私の手をつないで教会の礼拝堂に連れて行ってくれた。

荘厳な雰囲気の中、マリアさまの像がある。

゛シスターテレサ、マリアさまの像を描けばよいの?神父さまは私のマリアさまを描いてって言われた…どう描けばよいの?″

゛マリアさまに聞いてみましょう。お祈りしましょう…″

目を閉じて、小さな手を組んでマリアさまに聞いてみた。

頭の中でマリアさまを描いてみた。

マリアさまの顔がシスターテレサになり、そのあと違う顔になった。

  誰?

懐かしい顔。

誰かわからないまま静かに微笑む懐かしい人が私のマリアさまになった。