圭織の遺体を引き取るため父は警察病院に来た。

冴子は和哉の遺体を引き取るため警察病院に来た。

もう一人和哉の叔母であるデザイナーの藍野マリがいた。

藍野マリは和哉から遺書を送られて自殺を止めるために探していたところだった。

゛真中さんでいらっしゃいますか。申し訳ございません。和哉の叔母です。私がもっと早く気が付いていればこんなことにさせなかったのに。大事なお嬢様を道連れにしてしまって…″

゛いったいどうなっているのか、ご存じの事何でもいいんで教えて下さい。情けないことですがわからないことばかりなので。混乱しています。″

藍野マリは話し始めた。

和哉は藍野の姉の忘れ形見で母を亡くした和哉を育て上げた。

大学で美術を専攻していた和哉に美術評論家の丸井氏を紹介し、冴子を会わせたのも藍野だった。

冴子は華やかな女王さまだった。

憧れの人だった。

取り巻きの一人にすぎなかった和哉が結婚相手にまでなったのは丸井氏の一言だった。

゛平岡和哉と結婚しなさい。彼ならおまえが何をしても許してくれるし私の仕事を手伝わせるのにちょうどいい。″

結局、冴子は男たちとの遊びをやめずに身を固め丸井氏にはただ助手のように働く者がほしかったのだ。

そしてその事実を知るのは結婚式の当日。

その夜から冴子は遊び歩いて帰らない。

そのことを注意すると逆に結婚してやったんだから逆らうなと切れられた。

和哉から相談された藍野マリは憤りを感じた。

冴子に意見しようとすると和哉もわかっていたはずだといって取り合わない。

藍野マリは後悔していた。

こんな親子に和哉を引き合わせたことを…