圭織は気付いていた。

自分の体の異変に…

両親に相談すれば結果はわかっていた。

逢いたかった。

いつの間にかあの小さなアパートに来ていた。

誰もいないはず…だった。

窓が開いていた。

圭織はドアのノブを回してみた。

中からは懐かしい顔が表れた。

゛和哉…″

゛圭織…来てくれると思ったよ。なんとなくだけどね。″

゛逢いたかった…和哉…話したいことがいっぱいあるの。″

゛僕もだ。君に聞いてもらいたくて今日来たんだ。″

圭織は父母の話をした。

和哉は黙って聞いていた。

゛圭織…君は今のご両親を捨てて僕と一緒に行かないか?実は僕は妻に別れてほしいって言って出てきたんだ。やっぱり絵を描いていたい。絵で商売はしたくない。冴子はもう愛せない。君でなくちゃダメなんだ。″

゛和哉…あのね…もう一つ話があるの。まだ確かめてないんだけどたぶん…赤ちゃんがいるの。私のお腹のなかに…″

驚いた顔から喜びの顔に変わっていく和哉の顔を見て圭織はとてもうれしかった。

何があってもこの人についていこう…と思えた。

翌日二人の姿は消えた。

まさか二人が駆け落ちしたなんて…知る人はいなかった。

圭織の父母は家出人捜索願いを警察に出した。

和哉の妻は帰らぬ夫を探すために探偵を雇った。

そして一年が過ぎようとした頃思わぬところから連絡があった。