やがてコツコツと足音が聞こえてきた。
振り返れば黒をまとうアルファの上司がいる。
「一人じゃ適わないんじゃなかったのか」
腕が落ちた彼を見て、ジンはそうからかった。
こんなボロボロになった部下見てご苦労様も言えないなんて、と嘆きたくなるが、今始まったことじゃない。
「根性ですよね、もう。
頑張ったからご褒美くださいよ」
「あ、じゃホラ」
懐を探って、ジンは一本の飴を取り出した。
「なにこれ、メロン味?
珍しいですね」
いちごが切れたんだ、とぼやきながらジンも一本口にする。
誰かここに「呑気もたいがいにせえよ」と突っ込んでくれる奴はいまいか。
裏道を抜ける道の先では、女性が二人ほど心配そうにアルファたちを見ていた。


