聞こえたのは男の声だった。 あてがわれたのはどうやら刃物らしく、彼の背中で確かに気配が感じられた。 男は続ける。 「最近多発してる娼婦連続殺人事件の犯人さんだね。 悪いけど現行犯で逮捕しますよ」 男の声は若い。 年季の入っていない、みずみずしい声がした。 爽やかな香りが自然と鼻腔に入り込む。 沸騰しかけた彼の血液が、徐々に醒めていった。