立ち上がってみると修くんの向こう側が見えた。

ピンクの物体が落ちていた。

「あっ!!携帯!!」

修くんはガバッと後ろを向いた。

「あ…。」

そういうと気まずそうに携帯を差し出してくれた。

電池パックが外れていた。

あーぁ。水没じゃん。

「ここら辺って携帯ショップあったっけ。」

なんて言えばいいか分からなくて、誤魔化す。

バイトしてるからお金はあるけど気に入ってた携帯だからなんとなく寂しい。

「新しい携帯に変えるいい機会だよね。」

多分苦笑いしてたと思う。

「おっ。ポジティブやな。」

そういって修くんが頭をワシャワシャと撫でてくれた。

朝は時間が無かったので腰まである髪の毛を結んでいない。

だから後ろ髪が前まできたりしてグチャグチャになった。

けど嫌な気持ちにも全然ならなくて、そのかわりに胸が苦しくなった。

この気持ちはなんなんだろ…。

そう思いながらブレザーの胸ポケットに壊れた携帯をいれ、傷バンの入ったジップ袋を取り出した。

「はい。」

私はジップ袋から傷バンを取り出し、修くんに渡した。

「川の水って汚いからあんまりつけちゃだめだよ。ばい菌はいって膿んじゃうじから。」

「じゃぁ片足で岸までいかなあかんな。」

「肩貸すから頑張って。」

そういって、私は修くんにむかって手を差し出した。

修くんは手際よく足の裏に傷バンを貼り、手をとった。

「ありがとう」

修くんはそっぽを向いて照れくさそうに言った