時々修くんが「痛っ」とか「意外と冷たー。」とか言っていた。

私は岸からハラハラしながら見ている事しかできなかった。

「修く~ん。」

「なんやぁ?」

「だいじょぉ~ぶ~?」

「たぶんなぁ。」

たぶんって…。

修くんはザブザブいわせながら、歩いていった。

その時――

「ぐっ―。」

修くんが呻いてその場にしゃがみこんだ。

水かさは膝下ぐらいだから、修くんは胸ぐらいまで浸かってしまった。

無意識に体が動いた。

「修くん!!!!!」

靴も靴下も脱がないで川の中に入った。

そして、修くんの下まで走っていった。

水が重い…。

水しぶきがあがってスカートが濡れていくのがわかる。

「修くん大丈夫!?」

修くんのそばまで行き、問いかける。

修くんは下を向いていたから表情はよくわからないけど、震えている…。

「しゅ…修くん…?」

私もしゃがんだ。

冷たい水が体を冷やしていく。

修くんは急に私の方をみて、目を見開き

「何できとんねんっ!!!?」

と怒ったような顔で叫んだ。

「えっ!?えっえぇ!?修くん大丈夫なの?」

混乱で「え」が多くなる。

「足の裏に石刺さっただけや!どうってことない!!」

そういって勢いよく立ち上がろうとする。

けど、苦痛に顔をしかめ、またしゃがみ込んだ。

「足の裏見せて!!」

修くんの足をつかみながら言う。

修くんは片足で器用にたちあがり、足の裏を私に見せた。

そこには赤い血が滲んでいた。

「血でてるよ!?」

「こんぐらいかすり傷や。」

そう言いながら足を水につけようとする。

「だめーーーーっ!!」

修くんはびっくりしてバランスを崩した。

「え―――。」

―――バシャンッ

「いたた…。ってきゃぁっ!!」

「いって…。うわぁっ!!」

バランスを崩した修くんは私のほうに倒れてきた。

結果的には私と修くんの顔の距離は2cmぐらいになっていた。