急いで散らばった教科書やノートを集める。

「もぉっ、急いでるのにぃ」

無造作に拾ったものを鞄に詰め込んでいく。

全部拾い終わってなにか違和感を感じた。

さっきまで持っていたものがない。

・・・携帯がない。

反射的に川を覗き込む。

よく見えないけど私の携帯の色のピンクが見えた。

「う・・・うそぉ。」

その場にヘナヘナと座りこむ。

目の前が滲んでよく見えなくなる。

すると誰かが肩をたたいた。

涙が溢れそうになるのを我慢しながら振り向くと、そこには見知らぬ男子が立っていた。

短髪の髪の毛に黒縁めがねをかけていた。

制服からして同じ高校だと思う。

「どないしたん?」

そういいながらしゃがんで視線を合わせてくれる。

大阪弁なのが少し気になった。

「あ...あれ。」

川の中の携帯を指差す。

「携帯やんっ!落としてもたんか?」

「う...ん。」

彼はうーん。と言ってから、

「大丈夫。大丈夫。」

ポンポンっと頭を軽くたたいてくれた。

そのとたん我慢していた涙がボロボロと溢れてきた。

「えっ!?ご、ごめん。嫌やったやんな。」

慌てて手を離す彼。

すごいオロオロしている。

「う...ううっん。やさしくっ..されたら涙っでてきた。」

嗚咽がとまらない。

「携帯。取りにいこっ。」

今度は頭をなでながら河川敷まで一緒に降りてくれた。