ショックから最初に立ち直ったのは、ソニアだった。


「ねえ、ランダー、あたしお腹へった。なんか食べに行かない?」


「ソニア!」

ランダーはあきれたように言った。

「ここが何か変だと思わないのか?」


「思うわ。でも、お腹へってるんだもの。別に危険な感じはしないし、少しくらい休んで行ったって大丈夫じゃないの?」


「まったく、お前達ベルー族ときたら、どんな場所でもすぐに馴染むんだな」


ランダーは絶句して天を仰いだが、ソニアの方はランダーに何を言われようとまったく意に介するふうでもなく、真っすぐに広場を横切った。

決めた事をすぐ実行に移すのがソニアの生き方だった。

ランダーは足早にあとを追った。広場に面した宿屋の前で、ランダーはソニアの肩をつかんで振り向かせた。


「ソニア、悪いことは言わない。ここをすぐに出よう」


「そして、あの霧の中で道を捜してうろつくわけ?」


ソニアは肩におかれた手を振り払って、挑むようにランダーを見た。