「冗談でしょう?」

ソニアは、ふっくらとした紅い唇をとがらせて言った。

「あたしは、歩くわよ。少なくとも、もぐりこめる穴蔵が見つかるまでね」


ソニアは、つんと顎を上げて、ランダーの横をすりぬけて歩きだした。

ソニアに手綱を引かれた馬たちに突き飛ばされそうになりながら、ランダーは悪態をついた。


「おい、ソニア、離れるなよ。こんな所で姿を見失ったら、捜しようがない」


「そっちこそ、もたもたしていたら置いていくわよ!」


ランダーは、大きくため息をつき、しかたなくソニアの後を追って歩きだした。

ソニアは怒りだしたら手が付けられない。

焼けつくような太陽の光、砂塵を舞い上げる乾いた風――色彩も鮮やかな南国で生まれ育ったベルー族の少女にとって、この湿った霧が我慢ならないのは無理もなかった。


「ひとつ聞くが、そっちに何があるか分かって歩いているのか?」