【短編集】君に届いてほしいから─春─





「え?」


「…葉也がいい。」



は?


思わず顔をあげると珍しく俯いている渡辺葉也の姿があった。



「…ひ、人の名前をちゃんと覚えてからにしなよ」




これは私の精一杯の照れ隠し。